船舶免許取得記


1 きかっけ 
 今の仕事退職したら、南の島に移住して船買って、自由に釣りに行きたいという夢を数年前から持ち始めた。しかし、60歳過ぎてから免許取るのは苦しいなと考えて、2002年の秋、本当に取るための行動を起こした。
 40歳過ぎて、既に記憶力に衰えが見え始め、大丈夫かな?という不安はあったけれど…。

2 申し込み
 寒くなって季節風が強くなる前に試験を受けようと考え、9月下旬にヤマハボートスクールに電話で問い合わせをする。
指示どおりに書類を揃え、代金(93,600円)を振り込んで申し込む。
 身体予備検査は近所の開業医で受けたが、書類作製費用も含めて3,500円もかかった。視力検査と身体機能の確認(手足や膝の屈伸の程度)しただけなのに…

3 学科講習
 2002年 10月12日(土) 北区 ヤマハ発動機販売
 講師はもと外国航路の船長だったという人で、50代半ばの人だった。そこそこ厚いテキストを、1日で説明するから、憶える箇所の指示+内容説明といった感じだった。
 1日みっちり講習を受け、慣れない体験にとても疲れた。途中に休憩時間があまりなく、喫煙を我慢していたのが辛かった。でも、こっちがこれだけ疲れるのだから、講師の先生はもっと大変だろうと思った。

4 実技講習
 2002年 10月19日(土) ラグーナ蒲郡 天候曇り一時小雨、微風
 学科講習から一週間後に受けた。講師は学科講習と同じ先生だった。
私と同じ船に乗った受講生は、私より若干若いサラリーマン風の人と、20歳そこそこの若い兄ちゃんだった。若い兄ちゃんは仕事が忙しく、昨日まで一週間程県外に出張でほとんど勉強してないと言っていたが、事前に予習してなかったので、教官からかなりイジメられていた。
 一度船に乗ってしまうと、3時間くらいは降りられない。トイレはもちろん、タバコも吸えない。それが午前と午後の2タームあった。また、教官が厳しい人なので、とても緊張し、帰宅時にはほとんど起きあがれない程に疲労していた。

5 準備
 10月12日(土)に学科講習を受けてから、もらった問題集をとにかくやり始めた。全部で750問120ページあり、1回目を最後までやるのに3日かかった。でも、そのおかげで2回目は2日で終わり、間違えた問題にチェックして3回目はそれだけに絞ってやり、4回目は3回目にやった問題と、ランダムに開いたページの問題の確認をした。
 それと平行して、実技試験の点検項目、操船時の言葉を通勤途中の車の中や、風呂の中で大声を出して復習した。更には、食後にTVなどを見ている休憩時間に、ロープの結び方を何度もTVの片手間にやってみた。
 そのせいで、息子からは「お父さんいつも船の試験のことばっか言ってるね。もっと、別の話してよ。」と言われてしまった。
 仕方ないか?「右舷落水!」「エンジン中立、右転舵」「落水者確認」「風下より救助に向かいます」…などと言った類のことを10日程の間、毎日大声で叫んでいたのだから…

6 試験
 2002年 10月22日(火) ラグーナ蒲郡 天候晴れ 強風
 東名高速が集中工事だというので、6時前に出発。途中岡崎インターの辺りから渋滞し始め心配したが、JHのHPの渋滞予想どおりの時間超過で音羽蒲郡インターを出て、ラグーナ蒲郡には、7時半頃に到着。
 実技講習で一緒だった若い兄ちゃんは既に友人と一緒に来ていた。
 受付が始まるまで取りあえずは、車の中で休養と、学科試験に向けての最終チェックをする。

 学科試験
 試験を受けるのはひさびさなので、緊張する。就職試験以来20年ぶりくらいだ。
しかし、問題集を繰り返しやったおかげで、解答に迷う問題もなく、ゆっくりやりながら三回見直して40分程で退室した。(一応試験時間は90分)
 最後の受験生が退室してから15分くらいで合格発表。掲示された受験番号で合格を確認する。
 解答例も掲示されたが、確認する気にもならず、次の実技試験のモードに切り替えて「口述試験問題」の復習を始める。

 実技試験
 実技試験は午後2時からだった。試験官は若い男性で、30代前半の人だった。また、一緒の船で受験したのは、若い女性と初老の男性だった。
 私の受験番号は、この3人の中の真ん中だったので、緊張することもなく、妙に落ち着いて、他の受験生の誤答や安全確認忘れ等を心の中でチェックしながら、受験できた。
 ただ、午前中からの強風は収まることなく、波とうねりでかなり厳しい条件だった。(もう少しで船酔いしそうだった。)

 試験の内容
   乗船前
 乗船前にコンパスでの方位読み取り。もやい結び。を課された。
 その合間に、船体の名称について聞かれた。私は「バウアイ」を問われた。
 次に点検だが、私は安全設備の点検だった。
   乗船して
 乗船してからは、海図での距離計測。操船席に座っての口述試験。(>以下は私の解答)
 ・(冷却水水温計を指して)「これは何を表示しているか?」
         >冷却水の水温
 ・「このメーターが異常を示した時の原因を一つ答えよ」
         >冷却水取り入れ口にゴミがつまった
 ・「エンジンがかからない時の原因を一つ答えよ」
         >リモコンレバーが中立になってない
 ・(東方位標識の図を指して)「この標識のどちら側を航行するか?」
         >東側
 ・「座礁しないためにはどうするか?」
         >事前に海図で障害となるものや水深をよく調べておく
 ・「船舶検査証書に記載されている内容を二つ答えよ。」
         >船名、航行区域
   操船 
 試験艇はヤマハの船でなく、結構年代ものの船だったので、エンジン回転数は落ち着かないし(指定回転数も何もあったものではない)、時々エンストするし(車と違ってギアはないから普通はエンストしない)、リモコンレバーはガタガタで、中立で止まらず、ちょっと力を入れて中立にしようとするといきなりリバースに入るし…
 極めつけは、強風で波しぶきが操船席の窓にかかるのに、ワイパーが故障して前が見えない状態だった。特に蛇行運転では、ほとんど前が見えないままでの恐怖の操船だった。
 そんな条件の中だったが、安全確認、発声等忘れた箇所はどこもなく、人命救助も1回でクリア。着岸も、言われた通り、1.5m程離して平行に、着岸点にピッタリ着けることができた。

7 発表 
 発表は翌週の木曜日。電話をヤマハに入れて確認する。
自信はあったものの、世の中には「まさか」ということもあるので、「合格」の確認ができた後はホッとした。
一応、帰宅してから、試験機関の発表もネットで確認した。

 その後、免許の発行は11月1日で、手許には2日後くらいに届いた。

8 感想
 講習開始から、試験まで10日間。とても充実した10日間だった。
どんな種類であれ、試験を受けるのは緊張して嫌なものだが、逆にまたそのドキドキ感がたまらなく素敵な時間であることを初めて知った。
 大学受験や就職試験のような重苦しい重圧感はなく、本当に楽しんで受けられる試験だという気がした。
世の中に資格マニアと呼ばれる人々がいるが、その人たちは、きっとこの快感が病みつきになった人たちなのであろう。

                       
 
 免許証ではなく「海技免状」と印刷され、国土交通大臣の職印も押されていて、県公安委員会の自動車免許よりも重々しい感じが…  

     
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