屋久島紀行 No.2
2 縄文杉登山(05/7/30)
屋久島の屋久杉の中でも、最も古く(樹齢7,200年とも言われる)、幹の周りも最大なのが「縄文杉」と呼ばれる杉である。昭和42年に発見されるまでは世に知られずひっそりと深い山の中で生きていた。
その縄文杉に会うための登山が「縄文杉登山」であるが、険しい山道ではないにしろ、往復22km、約10時間に及ぶ長い行程である。
前日(7/29)
No.1で書いたように、屋久島初日(7/29)は、雷雨で航空機が遅れた。また、到着後も、夕方までのスコールのような断続的な雨が降り、翌日(7/30)の予定をどうしようか迷った。
屋久島での5泊6日のうち、始めの2泊は安房に取り、後の3泊は宮之浦に取ったため、縄文杉登山は、安房に泊まっているうちに行く予定で組んであった。(縄文杉登山への入り口、荒川登山口は安房からが最も近い)
天気予報は芳しくなかったが、「ひと月に35日雨の降る島」と言われる島なのだから、雨も覚悟で行くしかないと決め、宿で翌日の朝食と昼食をお弁当にしてもらうように依頼して、早めに就寝した。
また、レンタカーを借りてあったが、登山口まではバスで行くことを選択した。登山口の駐車場に停められるかどうか不安だったし、登山後に疲れた体で自ら運転するのを避けたかったからである。
バスは5:37安房発、荒川登山口まで約30分、料金は1人800円だった。
また、ネットで調べたところ、道に迷う心配はないということであったし、私自身が生物に多少の知識はあり、妻や息子に少しは説明したやれると思って専門のガイドは頼まなかった。
当日朝(7/30)
登山当日は、4時半に起床。
まだ暗いながらも、外をみると薄曇りだった。朝から土砂降りでないことを感謝しつつ、着替えて安房のバス停まで行ってバスを待った。
5:40にバスが到着。安房のバス停からは、我々を含めて11人が乗った。
バスの始発は宮之浦だが、空いていて、楽々座れた。
薄暗い安房の町
バスは山道を行く、途中屋久サルの群れに遭遇
6:10頃荒川登山口に到着。
20台ほどの駐車場は一杯で、あふれた乗用車は途中の道のあちこちに停められていた。数は20台以上はあったと思う。
荒川登山口駐車場に停まったバス
登山口の案内板
駐車場のあちこちのスペースでは、歩き始める人、体操をする人、朝食を取る人など、既にかなり多くの人々が行動を開始していた。
我々も、まず朝食を済ませ、トイレを済ませた。
登山開始〜小杉谷
往復22Km、10時間にも及ぶ登山になるため、登山届けをポストのような箱に投函し、とにかく早く出発しようと歩きを開始。(6:30)
最初はトロッコ軌道をそのまま歩くので、迷うこともなく、他に大勢の人がいるので不安もない。また、ガイド付きのグループは、ガイドが時々止まっては植物等の説明をしているので、ちらちらと見ながら、追い越して先へ進む。
トロッコ軌道
途中には、手すりのないこんな橋が何カ所かある
曇りだが、時々日の射す天気で、また、道の傾斜は緩く、気分良くどんどん歩いていく。
ただ、湿度が高く、吹き出る汗にシャツや首にかけたタオルがびっしょり濡れるが、全く乾かないのには困った。
歩き始めて、1時間程で小杉谷の小中学校跡に到着。ここで弁当を食べる人も多くいた。
小休憩の後出発しようとすると、トロッコが実際に走ってきた。(小さくて見にくいですが、黄色の物体がトロッコです。)
小杉谷〜大株歩道入り口
小杉谷からも、更にトロッコ軌道を歩く道が続く。大株歩道入り口までは、軽快に休憩もほとんど無しに、どんどん進んで行った。
途中、三代杉がある。こうした有名な杉には案内板か、名前の掲示があるので、見落とすこともないが、名もない杉の中にもなかなかの杉がいっぱいある。
三代杉の説明と実物の根本部分
スタートから2時間半、9:00に大株歩道入り口に到着。
トロッコ軌道はここで終わりで、ここから本格的な登山道になる。登山道の入り口とは川を挟んで、トイレがあるので利用する。
トイレは、荒川登山口とここしかないので不便であるが、我々3人家族は途中で困ることもなかった。
トイレ
大株歩道入り口看板
こんな山道が続くが、木の階段があり、本当にキツイ登りは数箇所程度
様々な有名木〜縄文杉
大株歩道から、キツイ登りを進んで行くが、本当に苦しい登りはそうたくさんはなく、また、木の階段があるので歩きやすい。
9:30 翁杉、9:36 ウィルソン株と有名なスポットを見学するが、ガイドブックや写真では表現できない圧倒的な大きさと量感、そして杉の質感等々に感動し、登山の辛さも忘れるほどである。
翁杉
ウィルソン株
ウィルソン株から空を見るが、とにかくデカイ!!
ウィルソン株に到着する頃から、ポツポツと雨が降り始めてきたが、降ったりやんだりなので、取りあえずカッパの上を着てそのまま歩き続ける。
そして、次に出会えるのが、夫婦杉、大王杉である。
夫婦杉。二本の木の枝が融合してしまっている。「夫婦杉」という命名は仲睦まじいという意味なのだろうが、融合して離れられないなんてある意味ちょっと怖いかも!?(^^;)
大王杉。縄文杉が発見されるまでは、「大王」の名の通り、一番の杉だった。枝がまるで人の腕のように見える。
こうした、有名木を見ながら歩く道中雨は降ったりやんだりが続くので、そのままカッパの上着だけでいたのだが、11:15いよいよ縄文杉を目の前にして、雷鳴とともに豪雨になってしまった。
あっという間に、カッパを着ていないズボンが濡れてしまい、カッパのスボンを着ることを諦めた。
とっさに、木の陰に身を隠したが、なかなか雨脚が弱くならないので、取りあえず縄文杉の横を通り抜けて、その先にある東屋に避難した。
東屋には、既に大勢の人が避難していたが、席を空けてくれて、座ることができたので、濡れたまま昼食をとることにした。
その間中も激しい雷鳴とともに雨が落ちてくる。
一般的に山で雷に遭遇したら生きた心地がしないのだが、森の中だからなのか周囲の人に慌てる様子はない。ガイド付きの人々は、ガイドの湧かしたコーヒーでくつろいでいた。
また、すぐ近くに屋久シカが現れて、和ましてもくれた。
元気を出して、縄文杉へもどり、記念写真を撮る。
屋久シカ

推定樹齢3,000年〜7,000と言われる縄文杉
帰路へ
雷鳴と雨は一向に治まらないが、このままず〜と雨宿りしてはいられないので、帰路へと歩き始める。
上半身はカッパを着ているが、汗と湿気ですでにずぶ濡れ、下半身は下着まですぶ濡れ、更にはスボンから滴った水が靴にも浸水して、歩くたびにじゃばじゃばと音をたてる始末。
雷が落ちたら…という不安がよぎるが、周囲の人は全く恐れる様子も無いので、大丈夫だろうと思いながらとにかく足を前へ進める。
夏の時期だけ、14:30に臨時のバスがあるがそれには間に合いそうもない。
17:00に定時のバスがあるだけなので、息子は「早く着いたらタクシー呼ぼうよ」と我が儘を言うが、携帯も通じないし、予約もしていないのでどうしようもないことを告げて、ひたすら歩く。
全身ずぶ濡れに、更に雨が降り注いで不快感この上ない。
雨が小降りになっても、湿度が高いせいか全く乾かない。
そうこうしながら、途中ネズミやモグラ、シカの子と出会いながら、登山口のバス停にたどりついたのは16:40過ぎだった。
ガイド付きの人々や、レンタカーの人々が帰途に着き、駐車場もすき始めた17:00ちょうどにバスが着た。
オマケ その1
朝二つの方向から来た二台のバス。帰りのバスも、二台来ると思いきや、一台しか来なかった。
運転手に聞くと、我々の行く安房は直行だが、反対方向の尾之間方面は途中乗り換えだと言うことだった。
まあ、われわれは直行だからよいが、反対方向の人は途中で乗り換えなので、この疲れているのに大変だと思っていると、…
なんと、乗り換えバスは屋久杉自然館の駐車場に待機していて、更には二台のバスはすれ違い様、乗車口をピッタリ合わせて停車した。
乗客は、バスから降りることなく、雨にも濡れず、乗り換えバスに乗り換えられたわけである。
さすが、種子島・屋久島交通バス!!
オマケ その2
宿に帰ってTVニュースを見ていると、今日は種子島・屋久島地方に大雨洪水警報が出ていたということであった。
そんな日によくも登山に行ったものだと後悔したが、まあ無事に行ってこられたから良かったと納得した。
オマケ その3
往復22kmの登山から宿へ帰った我々は、早めに体を休めようとまずは夕食を取り、風呂に入ろうと思ってた19:00過ぎ、なんと落雷で停電(>_<)
TVが見られないのは我慢するとしても、ドライヤーが使えない、エアコンが効かないのにはまいった。
仕方なく、窓全開でいたら少し慣れて涼しくなったが、暖かめの気温と湿気は不快極まりなかった。
農協の有線放送で、2時間程度で復旧の見込みと連絡されたが、2時間過ぎても全く復旧されず、諦めて寝ることにした。
結局、復旧したのは23:00過ぎだった。
全く困った停電だったが、素晴らしいことが一つ。
それは、満天の星が見られたこと。空には、こんなに星があったのだと改めて知り感動した夜であった。(^_^)v