屋久島紀行 No.5

 5 子ガメ放流体験(05/8/1午後)

 うみがめ館(公式HPはこちら)

 白谷雲水峡から一旦宿に戻り、汗で濡れた服を着替えてから、田舎浜のうみがめ館へ出かけた。
 うみがめ館のある田舎浜まではレンタカーで約30分。屋久島にしては珍しく午後まで晴れた日だった。

 うみがめ館は、NPO法人が管理する資料館で、入館料200円だった。入館すると若い女性(大学生くらいか?)が「よろしければレクチャーしますが…」と言うので、レクチャーしてもらった。
 彼女はボランティア4日目だということで、説明が若干きごちなく、「何でも質問して下さい。」とはいうものの、実際に質問すると「分からないので、聞いてきます。」と言って他のスタッフに聞きに行っていた。でも、初々しさと一生懸命さが感じられて良かった。

 館内には写真や剥製等の資料以外に、たらいに入れられた子ガメが4匹いた。

うみがめ館入り口  田舎浜の砂浜

 そのかわいい子ガメたちを観察しながら、子ガメ放流について聞いてみると、

 7月までは産卵観察、8月からは子ガメ放流になるが、自力で砂から出られない子ガメを人が掘り出して、そのカメを放流するので、放流する子ガメがいるかどうかは、調査しないと判らない。
 希望なら今日の20:00にまた来て欲しいが、放流対象の子ガメがいるかどうかは、自然が相手なので何とも言えない、という説明だった。
 
 我々親は、この時点で不確実なことにかける気はなかったが、息子「おかず」は20:00にまたここへ来る気になっていた。    

 夕方まで

 うみがめ館を後にして、夕方までは屋久島灯台へ行ったり、宮之浦港で釣りをしたりして過ごした。
屋久島灯台 港と釣果

 再び うみがめ館

 夕食後、気の進まない我々に対して、息子「おかず」はうみがめ館へ行く気になっていた。
行ったって子ガメはいないかもしれないという我々に、「とにかく行ってみる」という「おかず」に押し切られる形で行くことになった。
 
 夜道をレンタカーでまた30分。20:00ちょうどにうみがめ館に着いた。
 昼間来たことを告げると、初めて来た人にレクチャーする間、待っていて下さいと言われたので、昼間見た、たらいの中の子ガメを見ながら待っていた。
 一人の女性が10人くらいの来訪者にレクチャーするのと平行して、別の女性スタッフがトランシーバーで他のスタッフと連絡を取り合っている。話の内容から、浜辺のスタッフからの情報連絡と時間の打ち合わせをしているようだ。

 レクチャーの終了した20:30頃に、うみがめ館の玄関前に出るように誘導され、そこでまず注意事項を説明された。
  ・海岸に出たら光の出る物を使用しないこと(カメラのフラッシュはもちろん、携帯等も)
  ・余分な場所を踏まないように、スタッフの後を離れずに付いていくこと

 その後、スタッフが先導して実際の浜辺へ誘導された。光はほとんど無い海岸なので、空を見上げると満天の星が輝いている。
 誰かが、「すごい!プラネタリュウムみたい!」と言っていたが、逆だろう?と内心思った。しかし、プラネタリュウムが理論的に見えるはずの星を見せるのが役割だとすると、「(実物の空が)プラネタリュウムみたい!」だという言い方も真なのだと考え直しもした。

 参加者がほぼ海岸に出て、一箇所に集められると、今度は別のスタッフから今日の調査結果の報告があった。
 内容の詳細は忘れてしまったが、要は一斉に孵化して砂の穴からはい出る子ガメのうち数匹が穴の中に取り残されていた。その子ガメは、放置しておくと死んでしまうだけなので、スタッフが掘り出して放流している。と言うことで、バケツの中に7〜8匹の子ガメが入れられていた。

 その他、カメに関するいろいろな事柄が説明された後、20人くらいの参加者が二つのグループに分けられ、いよいよ放流になった。
 「少々濡れるけれど、海へ帰す手伝いをしてみたい人?」というスタッフの問いかけに、我が息子ともう一人女性が手を挙げた。
 「それじゃあ、ジャンケンで決めよう。」とスタッフが言うと、手を挙げた女性とその彼が「将来ある子どもに譲ります」と言って辞退して、息子に譲ってくれた。

 そしていよいよ、放流。
 スタッフが4匹の子ガメを砂浜に置き(波打ち際まで5〜6m)、それを息子が懐中電灯で誘導し、海に子ガメが入ったら懐中電灯の光を切るという方法だった。
 光に対して正の走行性を持つ子ガメは、息子の持つ懐中電灯の光に導かれて海へと帰って行くからである。

 4匹のうち、2匹は元気に砂浜を移動して海に出て行った。
 しかし、後の2匹はなかなか移動できず、またやっと波のある場所まで行っても、波に押し戻されるという状態だった。20分程も同じことを繰り返したが、一向に状況は好転しないので、スタッフが手で持って海に帰した。どうも、前足に不自由があって上手に歩いたり、泳いだりできないのがそもそもの原因だと説明された。

 子ガメ放流を終えて、満足した気持ちで帰路に就いた。

 暗い中、写真は1枚も撮らなかったので、ここに載せる写真は無いが、心の中にしっかりと残る思い出となった。